
「いいと感じたものは、FFメンバーとシェアしたい」。
そんなスタンスで、フミヤのおすすめ&お気に入りをご紹介するコーナーです。
今回フミヤのアンテナがビビッととらえたのは、こちら!
「カフネ」阿部暁子 著(講談社)

今、書店でもっとも売られている本である。帯に「2025年本屋大賞受賞。全国書店員が選んだいちばん!売りたい本」と書かれている通り、店頭の一番目立つところに山積みされている。
ご存知のように、映像配信やSNSなど娯楽の多様化とともに、本の売り上げは右肩下がり。日本には、直木賞・芥川賞・江戸川乱歩賞ほか、いくつもの文学賞がある。有名な賞の受賞作品は多くのメディアで紹介され、販売数が伸びる。書店を訪れた人も、帯に「受賞作品」と記載されていれば思わず手に取りたくなる。
本屋大賞は、「売り場からベストセラーをつくる!」という現場の強い想いから生まれた、書店員の投票だけで選ばれる賞だ。過去1年間で書店員自身が読んだ新刊書の中から、面白かった・薦めたい・自分の店で売りたいと思った本がラインナップされ、投票で選ばれる。全国の書店員たちがプライドを賭けて作品を選び、ベストセラーを目指すのである。私もよく本屋大賞受賞作品を読む。ちなみに電子書籍ではなく紙派。好きな時に好きな場所でページをめくるのが好きなのだ。
2025年の本屋大賞受賞作は、阿部暁子さんの小説「カフネ」。
「カフネ」とはポルトガル語で、愛する人の髪にそっと指を通す仕草のことらしい。ブラジルでよく使われる言葉だという。愛する人の指で髪を梳かれると、なぜかすーっと力が抜け、心地よい安堵感に満たされる。あの動作に名前が付いていたなんて、初めて知った。
小説「カフネ」は、二人の女性の物語。法務局に勤める野宮薫子は、最愛の弟が急死して悲嘆にくれていたところへ、夫からは突然離婚を告げられる。そんな時、弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに出会い、彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことになる。薫子とせつなは、二人とも芯の強いキャラクター。まったく性格の違う、まるでお互いを嫌っているかのようにすら見える女と女。その二人がじわじわと親密になってゆく過程が、なぜか読んでいて嬉しくなる。おそらくそのあたりは、女性読者の方が深く細かく感じられるような気がする。作者の阿部暁子さんは、妊娠中にこの本を執筆されたらしい。物語全体の核に「食」がある。食べ物が人に与える優しさ、安堵、そして幸せ。帯に書かれたコピーは「『おいしい』と泣くことから再生は始まる」。実際にけっこう泣ける話で、私は何度もウルッと目頭が熱くなった。
小説を読む時、私は勝手に頭の中で、登場人物を映画のように実際の俳優でキャスティングしてしまう。これは多くの人がやるのではないだろうか。今回も自分なりに登場人物をイメージして読んだ。ここに、その配役を書いてみよう。あくまでも私が好きなように考えた配役イメージだが、俳優のギャラやスケジュールなどは考えなくてもいいし、それなりに本気でキャスティングディレクターをやってみると面白いものだ。ただし、これを読んだFFメンバーは、最初から私が選んだ俳優を想像しながら「カフネ」を読むことになる。例えるなら、映画を観た後に原作本を読む時のような感覚かもしれない。FFメンバーだけが同じ俳優を想像して読む小説———これはこれで、FFならではの新しいシンクロナイズ的・小説の読み方といえる。
まず、主人公の野宮薫子と小野寺せつな。この二人はすぐに浮かんだが、他の配役は悩みに悩んだ。周囲を固めてこそ、いい作品になる。ネット上で俳優を年齢別に検索し、ああでもないこうでもないと考えた。登場人物の年齢と俳優の実年齢は多少異なるが、そこは彼らの演技力とみんなの想像力でカバーしてもらおう。
〜「カフネ」FFキャスティング〜(役名、年齢、俳優)〜
野宮薫子(41歳) 吉田羊
小野寺せつな(29歳)菜々緒
野宮春彦(29歳) 中島健人
滝田公隆(41歳) 石丸幹二
常磐斗季子(43歳) 菅野美穂
薫子の父(70代前半)小野武彦
薫子の母(60代後半)木野花
以上の豪華キャストである。
どうだろうか? そこはイメージと違うなぁ~と思う人は、どうぞ自由に自分なりのキャスティングを考えてくださいませ! 昨今の映画やドラマでは強い女性が主人公の作品も多いので、「カフネ」もいずれ映像化されるかもしれない。
それでは「カフネ」を、どうぞ読んでみてください。