FF SPECIAL INTERVIEW

走り続けた「ACTION」が着地、次なる挑戦「十音楽団」へ

「今だからこそ、心が盛り上げるコンサートを」とフミヤが起こしたポジティブなACTION。
スタッフやファンとの絆に支えられ、ACTIONツアーは見事ゴールにたどり着いた。
そして、早くも次なる挑戦として、あの「十音楽団」が第二弾として帰ってくる! 
開けた窓からセミの声が聞こえる8月下旬。

ACTIONツアーの振り返りから、十音楽団やアートの展望まで語ってもらった。

●よく頑張った! 俺もみんなも

〜 ACTIONツアー 〜

———ACTIONツアー、FF会員限定公演を含めると41本が終了しました。8月のアリーナ公演「One more ACTION」の大阪城ホールまで含めると足掛け10ヶ月の長丁場。ついに完走できましたね。

F:なんとか最終日まで行けて、本当によかったよ! ただ、最後に追加したOne more ACTIONの横浜アリーナが中止になったのは、すごく残念だった。でも今の感染状況を見るとやっぱり無理だったな。いやー、本当に長いツアーだったね! FFのみんなも本当によく協力してくれたと思うし、だからこそ最終日までたどり着けた。俺はずっと気を張っていたから、終わって気が抜けた。横浜がなくなったと聞いたショックとともに、肉体が緩んだのがわかるぐらい。ああ、もうだらだらしていいんだー、って。自分で言うのもなんだけど、よく頑張ったよ(笑)。俺もみんなも。長い期間でかなり体力を使ったし、感染対策だけではなく、普段以上に肉体をケアする必要があった。だって最後なんて10日間で6本やったんだぜ!(笑) 普通だとありえないけど、延期や変更でそういう日程になってしまった。だから7月10日・11日が山場で、そこにピークを持っていくしかない、と頑張った。ライブが終わったら酸素カプセルに入り、サプリ飲んで必死に身体を回復させた。それでも後から映像を見ると、自分としてはもっと動いたつもりだったのに動ききれていない(笑)。歌は調子よかったし、動きも客席で見てるぶんには分からない程度だけど、これが蓄積疲労ってやつかぁと思ったよ(笑)。

———フミヤさんの意識としては、実質的にはどの日が最終日という感覚でしたか?

F:やっぱり7月11日の横浜、FFメンバーだけの公演だね。正式には10日が最終日ということではあったけれど、気持ちとしては11日に、やっとみんなでここまで来られたと思えた。コロナ禍で、うちは業界でも先陣を切ってツアーを始めたけど、最初の頃は本人以外でも周りに誰か一人でも陽性が出たら中止!という厳戒態勢だった。普段はライブのあと食事や飲みに行くツアースタッフたちも、やめて気を付けてくれたし。スタッフ、ファン、あらゆる協力があってのツアー完走だった。これだけ本数がある中で、中止が2本だけ、横浜アリーナを入れても3本で済んだのはすごいことだと思う。

———One more ACTIONは結果的に大阪城ホールのみとなりましたが、当日はいかがでしたか。

F:久々に城ホールでやれてよかったよ。大阪は、日程変更で何度もご迷惑をおかけして……って、俺がかけたわけじゃないんだけど、コロナのヤツが(笑)。延期がまた延期というのが何公演もあった。12月が2月になり、さらに6月や7月になったり。最初のチケットをずっと持っていてくれた人は、ありがたい。逆に行けなくなってしまった人は申し訳ないけど。セットリストは、ACTION本編とは少し変えて「Song for U.S.A.」「I have a dream」「白い雲のように」「君を探しに」「女神(エロス)」の5曲をスペシャルで入れた。会場の大きさに合わせたセットリストとパフォーマンスが必要だから、細かいパフォーマンスをする曲よりも、音でしっかり届く歌を選んでる。あと、予想してはいたけど、お客さんが声を出せないのはホール以上にやりづらかったね(笑)。俺たちロックやポップスのコンサートというのは、本来、観客とコミュニケーションしたり、程よく頼ったりするものなんだよ。よく、アップテンポの曲で盛り上がりながら、サビでマイクを客席に向けてみんなに歌ってもらう場面があるじゃん。ああいうのが今回はまったくできなかったから。でもライブ自体は盛り上がったし、楽しんでもらえたと思う。アリーナで光り物がキラキラしているのは綺麗だったよ。

———パシフィコ横浜の翌日7月12日から、東京はまた緊急事態宣言。まだ収束が見えませんね。

F:1年前は、まさかコロナがこんなに長引くとは思ってなかったよなー! まさかオリンピック後まで続いてるとはなぁ……。One more ACTIONの2本も、ワクチン接種が始まったから感染者が減っていくだろうという見込みで計画したのに、全然だった。むしろ感染者数の棒グラフを見ると、1月の休み明けが東京タワーの高さだとしたら、今はもうスカイツリー以上に上がって、終わりも見えない状態。やっぱり変異株がひどいよね。しかも人によって症状が違うのが困る。ミュージシャンでも、無症状だけど一応ツアー前に検査してみたら陽性で、急遽中止という人もいる。まだまだ収束は見えないから、引き続きみんなで免疫上げて気をつけていかないとね。また冬のツアーもあることだし!

●楽曲をしっかり聴いてもらえる場

〜 十音楽団ツアー開催決定 〜

———11月から来年4月にかけて、第二弾となる「十音楽団」のツアーが決定しました。

F:今回のコンセプトはまだこれからだけど、前回のように、章ごとに場面が展開していく流れは汲んで作るよ。厳密なストーリーはなくても、展開があって、その合間で語りを入れるスタイル。十音楽団は、弦がいてドラムがいない独特な編成。バンドを楽器で分解できるのも強みで、曲によってピアノだけとかギターだけとか、弦楽器だけというメリハリもつけられるから場面が作りやすい。まずセットリストを考えて、どう演出していくかを考えていく感じだね。選曲は、これを十音楽団でやったら面白いかどうか?という基準。この間、テレビ番組の収録でクラシックを日本語の歌として2曲ほど歌ったんだよ。十音楽団でもそうやって、ある程度有名なクラシックに日本語の歌詞をつけてポップスとして歌うのを入れても面白いかもしれない。あとチェッカーズ曲を使うこともできるから、それも表現の幅が広がる要素になるんじゃないかな。ちなみに、チェッカーズのデビュー当初3年間ぐらいの楽曲は、歌詞で泣けるとかではない。もうその楽曲が耳に入った瞬間に当時の景色や感情が蘇るような、飛び道具的な存在だね。

———十音楽団は、フミヤさんにとってどのような表現をする場ですか。

F:楽曲をしっかり聴いてもらえる場としてのコンサート、だね。踊って騒いで楽しい!と流れていくタイプのコンサートも必要だし、一方で十音楽団は、より深くじっくり聴いてもらう時間。語りを入れているのも、曲の世界にすーっと深く入ってもらうため。初めて俺のコンサートを観る人でも、あの語りがあることで歌詞が耳に入りやすくなって、楽曲を理解してもらいやすいんだよ。俺もしっかり歌詞を届けるように歌っているし。そうそう、前回、知り合いのご夫婦が見に来てくれたんだけど、俺の曲なんて知らない旦那さんが泣いてたんだって。それにしても、第一弾で出し尽くしたのに、果たして1作目を超えられるものができるのかというプレッシャーはあるよ(笑)。舞台によっては、長年同じ演目をやり続けているものもあるじゃん。森光子さんがされてたのとか、堂本光一くんのような。でも、やり方としては定番を続けるのもありなんだろうけど、俺自身は飽きっぽいからできないな。その都度、新鮮なエンターテインメントとして創り上げたい。

———フミヤさんの場合はそうでしょうね。十音楽団の、コンサートを主軸に朗読や演劇のようなエッセンスを入れるアイデア自体は、どこから来たのでしょうか。

F:もともと舞台劇の脚本を書いてみたいなという思いはあって、アイデアとしてはずっと持っていたんだよ。でも、自分がやるなら歌が入ることになる。かといってミュージカルみたいのは恥ずかしくて無理。じゃあどうしようか……と、あれこれ考えてはいた。それが、ああいうスタイルの新しいコンサートになった。演技の舞台というのは、基本的に舞台での動きや位置まで決められてしまう。でも俺のはあくまでコンサートだから、ある程度は決めたとしても、実際に動いてみてこっちの方がいいなと思ったら、次の公演から変えられる。その感覚の違いは大きいだろうね。

———前回見ていて、これはフミヤさんのコンサートを見たことがないけれど普段から音楽や舞台が好きだという方に、ぜひ見ていただきたいなと感じました。

F:それはまさにそう。お客さんの大半がファンだろうけれど、何割かの初めて来てくれる人たちのためにも作っているから。さっきの男性の話もそうだけど、曲を知らなくても、まったく問題なく楽しんでもらえるはず。あとは、コロナがもうちょっと収まってくれればというところだよね……。扱いとしてはクラシック系で座席は100%入れることもできるんだけど、安全のためグループディスタンスにしているから、来てもらいやすいとは思う。ちなみに俺はこの間、十音楽団用の眼鏡を買った(笑)。黒縁の眼鏡っていう感じじゃないなと思って、もっと素朴な感じのを。そういう意味ではもう次の企画は始まっている。そろそろ企画のコンセプトや中身を考え始めていこう。

———第二弾がどんなものになるのか、楽しみにしています。

●ギャラリーは自分の作品にもいい刺激に

〜FUMIYART〜

———FUMIYART展も、浜松、福岡と順調に各地を巡回しています。

F:コロナ禍でのアート展の入場状況から見ると、浜松は健闘してるらしいよ。FUMIYARTはまだしばらく各地を回るし、会期もわりと1ヶ月とかロングランだから、近くに来たらぜひ行ってみてほしい。

———浜松では、FFメイルオーダーのカレンダーに使われた作品がお洒落に展示されています。そう思うと、カレンダーで1年間フミヤさんの未発表作品を飾れるのは贅沢なことですよね。個展で実物を見る楽しさもありますし。

F:そう。あれはカレンダーの絵プラス鏡1枚という13枚の展示。各地を巡回しながら新作も増えていくから、代官山の時はなかった作品もいろいろ出ている。だからまた東京でもどこかでやれたらいいなとは思ってるけどね。あちこちやっているうちに、美術館長さん同士のコミュニティで話題になってくれるといいんだけどなぁ(笑)。

———今回「藤井画廊」で紹介いただいた、マーカーで描かれた新作も面白かったです。

F:そう、あれはまず試作のつもりで作り始めてみたんだけど、あっという間に描けてしまって作品になった。まだ無題だけど、額装もしたよ。しかも、すでにあの後もう1作品描けたんだよ。これから紙以外にも、キャンバスにも描いてみたい。キャンバスだと、まず白を塗って埋めて、画用紙に近い感じにしてから描く感じだね。アイデアや手法を思いついたら、頭の中で素材までシミュレーションしてから実際に試す。今までの経験で、ある程度は想像ができるから。勢いだけで描き始めると失敗することも多いんだよ(笑)。途中で放ったままの作品もいっぱいあるし、描いてしまって元に戻せないのもある。あのマーカーで描く手法は、そのうちペンじゃなく筆で描いてみたいとは思ってる。

———アートの書籍「All About FUMIYART 藤井フミヤの想像新世界」も好評ですね。

F:おかげさまで、しばらくAmazonの美術本で1位だった。Ed TSUWAKIくんから教えてもらったんだよ。「フミヤくんの本、ずっと1位だよ」って(笑)。この時期に、いい形で本にまとめてもらえてよかった。

———Edさん、FUMIYART GALLERYでの個展も懐かしいですね。フミヤさんは今もアートやデザイン系のお友達が多いですよね。

F:そうだね。昔からミュージシャンとか歌手よりも、そっち系の知り合いが多い。ファッションデザイナーとかアーティストとか。俺自身がもともとデザインが好きだし、歌手ではあるけど、いわゆるミュージシャンタイプではないからだろうね。

———だからこそ、いろんな情報をキャッチするのが早いんでしょうね。フミヤさんを通じて知った人や物を、数年後に一般的に目にするようになって「これ前にフミヤさんが話していたな」ということがよくあります。それをFFにもシェアしてくださっている。

F:今、JONIOとNIGO®が茶道にはまってる。彼らにとっては茶道がサブカルチャーみたいなもので、むしろカッコいい、と。もう自分で茶碗を作ろうというところまでいってるらしいよ(笑)。この間、知り合いの骨董商のところにNIGO®と一緒に行って、利久の花瓶と、利久の一番弟子・古田織部のお椀を見せてもらった。こんくらいの器で4000万だって!(笑) 安土桃山だもんね。いやー、奥深い。いずれ日本文化も、もっとブームが来るかもね。雑誌も、今は「婦人画報」が一番面白い。日本文化がメインで、そこにアートや旅や食がある。俺の年齢だからっていうのもあるけど、若いファッション誌とかより断然面白いからね。

———やはりフミヤさんにとってアートは欠かせない要素ですね。ギャラリーは、その後計画に動きはありますか?

F:ギャラリーは、徐々に稼働していくけど、場所やいろんな状況からして、一般にオープンするようなものではなくクローズドなものになった。ギャラリーにもいろいろあって、過去にやってたFUMIYART GALLERYやSPACE FORCEはオープンな展示をやる場所だったけれど、今回やるのは、チケットを買って入場する美術展のような場所ではないということ。例えば村上隆さんはファンが多くて美術展には行列ができるけど、村上さんのギャラリーにお客さんがあれほど行くわけじゃないからね。周りのアートのプロである仲間といろんなことをやっていく。若いアーティストたちが出入りしてくれれば俺も刺激になるし、若い力でいろいろアート界に発信していければと。

———いろいろな方とのアートのプロジェクトを進める場なんですね。

F:そう。FUMIYARTに関しては、引き続き、各地の個展会場で楽しんでもらえればと。ギャラリーをやることは自分の作品作りにもいい刺激があると思う。アートって面白いものでさ、じーっと鑑賞して、いろんな角度から眺めて味わいたい絵もあれば、その場での面白さや雰囲気を楽しむものもある。今、六本木ヒルズでやってる現代アートのKAWS展なんか見ると、俺にとっては「すげえな、こんなでかい人形を作って!」という驚きやインパクトはあるんだけど、長く見て味わうというよりは、さらっと「面白い!」とその場で感じるのがすべて。アンディ・ウォーホルの名作であるキャンベルのスープ缶も、見てしみじみするわけではなく、デザインとしてカッコいいなと思うわけで。種類にもよるけど、現代アートってそういうものなのかもしれない。そう考えると、俺の作品は現代アート的ではなく、地味に作品を作って、ゆったり味わってもらいたいタイプだな。また来年のカレンダー制作時期がやってきつつあるし(笑)、コツコツ描いていくよ。

———では、来年にかけて巡回中のアート展や十音楽団、また続報を楽しみにしています。

※インタビュー以降に内容に変更が生じている場合があります。ご了承ください。