FF SPECIAL INTERVIEW

いよいよ4月にスタートする、47都道府県コンサートツアー“FUTATABI”。
関係各所の準備も大詰めとなり、昨年6月以来となるステージに期待は高まるばかりだ。
2月中旬に行ったインタビューでは、ツアーに込めた想いはもちろん、それ以降に予定している活動のカケラについても聞かせてくれた。

フミヤ(以下F):もう頭の中は、ツアーに向けてスタートを切っている感じ。バンドや衣装の打ち合わせもしたし、舞台セットも決まって、一歩一歩近付いているね。ここからさらに初日の1ヶ月前ぐらいになると、スイッチが完全に入る。ちょうど今朝、最終的なセットリストが決まったんだよ。セットリストを考える時は、まず曲数を決めて、客席の様子や自分のステージでの動きも想像しながら、緩急つけた内容に作り上げていく。そしてセットリストが決まったら、プレイリストを作って丸ごと聴いてみる。飛ばしたり早送りしたりせず、実際の時間をかけてね。聴き手として、ここのブロックはこのぐらいのボリュームなんだな、こんな印象を受けるんだな……と、何度か繰り返して聴く。そこまではいつもやることなんだけど、今回はさらに、セットリストがほぼ完成した段階でカラオケに行って歌ってみたんだよ。久しぶりに歌う歌の原曲キーとか、実際に歌った感じを確認したくてね。

F:そうなんだよ(笑)。普段、自分からカラオケに行くことなんてないし、セットリストの確認のために行ったのも初めて。娘に「カラオケボックスって、どこがいい?」「綺麗なのはここだね」とか教えてもらってさ。フライドポテトとビールだけ頼んで、チェッカーズと藤井フミヤ縛りで歌いまくったよ!(笑) オケの音質はだいぶ寂しい感じだけど、それはしょうがないな。あと、なぜか最初から原曲とキーが違う設定の曲もあるし、いろいろ発見があったよ。とにかく、候補曲をどんどん入れて歌ってみると、「これは半音落としてみよう」とか「この曲は今回はちょっと違うな」という感じで、違和感に気付けたりする。それでセットリストをもう一度見直して、最終的なものを提出した。

F:全体的に、前回の続きを楽しんでもらう感じだね。いわゆる定番曲はあるけど、なるべく前回とかぶらない曲を選んだから、7割近くが前回とは違う曲になっている。ヒット曲オンパレードなのは変わらないから、初めて来てくれる人にも楽しんでもらえるはずだよ。サウンドも、基本的には原曲の雰囲気を大事にして、変にアレンジしたりしないし。バンマスの大島くんとも、どういう感じの演奏やサウンドにしていくかを話し合っている。バンドメンバーは前回と同じロック系のメンツだから、16ビートや打ち込みよりは、生のバンドサウンドになる。

F:今回に限らず、やっぱり長いツアーに穴を空けられないというプレッシャーはあるよ。ただ、前回は終盤の蓄積疲労がしんどかったけど、今回はスケジュールレベルで対策ができている。やっぱり、一度やってみて、必要な改善とか進化をしていくのが大事だよね。そういう意味で、前回の経験を生かせるのはありがたい。体調管理も、基本的には体力と免疫力を高く保っておくことだから、運動を続けつつ、手洗いを徹底しているし、人混みに出た日は鼻うがいもする。とはいえ、確実に前回のツアーより1歳は歳を重ねているわけだからね。

F:そうか、そうだよなぁ! なんせ1年以上かかる長いプロジェクトだからね。でも2つ歳をとるってさ、生命保険だったら、かなりパーセンテージが変わるやつだよ(笑)。幸い、ずっと人前に立つ仕事をしているから、変化のスピードは人より遅いのかもしれないけど。今朝も7時に起きてジムに行ったけど、運動も仕事のうち。雨や寒さでサボりたくなることもあるけれど、これは仕事なんだ!って言い聞かせて行くようにしている。今は、とくにストレッチを大事にしている。全部やると1時間かかるぐらい、じっくりやってるよ。

F:そう。先輩ボーカリストの中で、とくにステージ上でよく動いているのは、矢沢永吉さんやサザンの桑田さん。やっぱり動ける身体って大事なんだよね。ただ、究極のところ、ミュージシャンが動くか動かないかは、どっちでもいい要素でもある。なぜなら、音楽はあくまでも耳で聴くもの。街で知らない曲が流れていて「この曲、いいな」と思った時点では、アーティストの姿形も年齢も分からないわけじゃん。だから本来ミュージシャンというのは、アイドルや俳優と違ってビジュアルはそこまで関係ないんだよ。だからこそ、聴覚だけで心に届く“何か”が大事だと思っている。自分も、どんどん削ぎ落として歌に特化してきたけど、今後はさらに動きよりも歌そのものに集中していくことになるだろうし。だからこそ歌詞についても、初めて聴いた人にも伝わりやすいよう、なるべく分かりやすい言葉で書きたいんだよね。英語より日本語、日本語でも分かりやすい言葉。今時のアーティストはあえて難解な歌詞も多いけどね。今の日本のミュージックシーンは、世界から見ても独特な存在感がある。Mrs. GREEN APPLEとかYOASOBI、Official髭男dism、Adoのような、日本独特の世界観を持ったミュージシャンが活躍している。とくにアニメと組み合わさったりすると、海外から見て“日本らしさ”として強みになっていたりするよね。あと、ミュージシャンによって、歌に登場する世界が若いままなのか年相応になっていくか、という違いもある。この間、テレビで竹内まりやさんの特集を観たんだよ。若い時は若い恋愛を歌っていたけれど、ある程度の年齢になると、長年の夫婦が冷めた愛を温め直すような歌も歌われている。俺の場合はラブソングがメインということもあって、表現する世界観の主人公は主に20代後半から30代ぐらい。もちろん、やや哲学的な歌や、世代を超えた普遍的なラブソング、「友よ」や「僕らの人生」みたいに人生全般を振り返るような歌もあるよ。でもベースとして、聴いてくれるファンがワクワクするようなフレッシュな恋の歌は、ずっと大事にしていきたいなと思ってるから。

F:やっぱり、見終えた時に「来てよかった」「楽しかった」「聴けてよかった」と思ってもらえたら嬉しい。その感情を全国に届けにいく旅だから。その上で、「また来たい」と思ってもらえたら最高だろうね。俺の場合、大きな仕掛けや派手な映像を使うとか、ダンサーが出てくるみたいな演出はないから、純粋に楽曲そのものを心に届けることに集中している。その結果として、あっという間の2時間だった、と満足してもらえることが大事。もちろん「藤井フミヤ、一度観てみたい」も引き続き歓迎。誰しも、ファンでなくても機会があるなら一度生で観てみたいアーティストっているじゃん。全都道府県ツアーというのは、その絶好の機会だからね。あと、俺もせっかく全国を旅するわけだから、もうちょっとSNSをやってもいいかもなぁと、現時点では思っている。

F:そうだよね。俺自身も旅している感が味わえるし、みんなも一緒に全国を回っている感じを共有しやすいんじゃないかな。だってこのツアー、俺だけが回るわけじゃないからね。FFのみんなも一緒に旅をするわけだから。ライブに差し障りのない範囲でどこまでできるか、実際にツアーが始まってみてから考えるつもり。

F:写真も多いし、読み応えもあるよね。みんなの地元情報と照らし合わせたり、旅の参考にしてもらえたら。

F:ツアーと並行して、少しずつ次に向けての制作や、レコーディングに向けて動き出そうかなというところ。時期はまだ分からないけれど、何曲かまとめて出そうかという話になっているよ。アルバムについては、これから先、どんな新譜をどれぐらい制作するか、だよね。ソロもF-BLOODも作るだろうけど、まずF-BLOODは、男っぽいロック系という軸があるからイメージしやすい。ソロについては、次はポップなものを作ろうと思っている。この歳でこういうものを歌えるのは俺ぐらいしかいないんじゃないか?って自分でも思えるぐらいのポップ感を出していきたい。現時点でのコンセプトは、ショッピングモールに行く間に聴く音楽(笑)。車に乗ってショッピングモールに出かける車内で、音楽と会話を楽しむようなイメージ。それからライブについても、久しぶりにオーケストラやカルテットでのライブもやりたいなと。 COREを含め、いくつか考えているよ。まだ、だいぶ先だけどね。40周年から、これまでを振り返るタイプのツアーが続いているけれど、すでに今後に向けての具体的なアイデアやプランがいろいろある。

F:うん、ぼちぼちやってるよ。今回の「藤井画廊」でも紹介したけれど、空いた時間にちょっと絵を描いたりはしている。FUTATABIツアー中には、意外と作品が増えるかもしれないと思ってるんだよ。というのも、ライブから帰ってきたら身体を休めたいし、それには家で絵を描いているのがいちばんだから。音楽とはまったく違う作業をすることで、気分転換にもなるしね。とにかく今は、俺の中では、すでにツアーに向かっている状態。始まって余裕が出てきたら、いろいろ並行して進めていこうと思っているよ。

※インタビュー以降に内容に変更が生じている場合があります。ご了承ください。