
「いいと感じたものは、FFメンバーとシェアしたい」。
そんなスタンスで、フミヤのおすすめ&お気に入りを紹介するコーナーです。
今回フミヤのアンテナがビビッととらえたのは、こちら!
「大河の一滴 最終章」五木寛之 著(幻冬舎 刊)

ある日、本屋でハードカバーの新刊が置かれたコーナーを眺めていたら、「大河の一滴 最終章」が目に止まった。えっ、「大河の一滴」だ! しかも最終章! 昨年の「Fumiya’s Favorite」(FFF vol.127)で、1998年刊行の「大河の一滴」を紹介したばかり。前作から28年間の時を経て出版されたことになる。
五木先生とは昨年、女性誌の対談でお会いした。93歳になられたが、まだまだお元気そうだった。でも、「大河の一滴」が最終章となるのは、さすがに仕方ないか……。実際には出版社側からの提案らしいが、おそらく、ご本人もそう思われたから「最終章」と付けられたのだろう。とにかく「大河の一滴」は、私にとってバイブルのような本。これは絶対に購入しないわけにはいかない1冊である。
表紙は前作と同じタッチの、アンモナイトの化石と思われる絵。版画家である五木先生の奥様、五木玲子さんの作品だ。今回も奥様が描かれたのだなと、ふと安堵のような幸せな気持ちになった。
今作には、90歳を超えられた五木先生なりの人生論が綴られている。
その中に、「暗愁(あんしゅう)」という言葉が出てきた。初めて聞いた・読んだ言葉。誰しも抱えている、心の奥の悲しみのような切なさのような、あるいは孤独感のような虚無感のような感情。それを言葉で表すと「暗愁」になるのではないか。前向きに元気に生きることも大切ではあるが、暗愁というものを抱えながら生きてゆくことが、実は大事なのでは……と説かれている。
私はまだ60代半ばではあるが、たしかに、その言葉から自分なりの深い暗愁を感じ取ることができた。人間は一人で生まれ、一人で死んでゆく。生まれたら、そのゴールは死であることを分かりながらも毎日を生きている。自分も、いつか終わる人生というものに、ふと虚無感のようなものを感じることはあるし、自分というのは一人きりであるということに孤独感を感じることもある。
私が作る歌も、究極的には人間の孤独に向けて歌っているような気がする。歌で誰かの孤独を少しでも和らげられたら、という思いがあるのはたしかだ。だからいつも、自分のためではなく誰かのために歌っている。
「大河の一滴 最終章」を読み終えて本を閉じた時、自分も、誰もが抱える「暗愁」に響く歌を届けられる歌手になりたいと思った。